タラス:

この象牙の塔の歴史は、まさに人
間の魔法の歴史と同様だ、などと
言われておる。
お前さんは知っているか?我々人
間が誰から魔法を習ったのかとい
うことを・・・
それはまさにエルフからだよ。
今はこの象牙の塔で専門教育を受
けたウィザードたちとは比べ物にな
らないエルフたちではあるが、実は
彼らこそが人間に魔法を教えた師
匠であると、お前さんは信じられ
るかい?
わしはまさにその点こそが人間の
最も優れた長所だと思っておる。
人間はなんであれ、自分のものに
吸収し、既存のものを遥かに超え
た規模まで発展させてしまう。
だがそれは同時に人間の最も劣る
点だとも言えるのだよ。その発展過
程で人間は数多くのものを踏みに
じり、使えなくしてしまうんだか
らな。

どうにかして他の者たちより優位
に立とうと、持てる力の限りを尽
くす、それが人間という種族なん
だよ。
それに比べたらエルフはいつも永遠
の流れの中で自分も一緒に流れて
いくのを望むんだ。彼らが望むの
は人間たちの火のような発展では
なく、流れていく水のごとき進化
なのだよ。
腰の低いエリオンは自分はただ過去
に失われた魔法を再発見しただけ
だというが、わしはそうは思わな
い。彼は精霊魔法の創始者といえ
るだろうよ。

誤解しないで欲しいのだが、わし
はエルフが人間よりも優れているだ
とか、人間は卑しい種族だとか、
そんな話をしたいわけじゃないん
だよ。
明らかにこの二つの種族は根本が
全く違う種だとは言えるが、長い
長い年月を過ごす中でいつの間に
、お互いに足りないものを学んで
いるのさ。
これからも人間とエルフが今のよう
にいい関係を維持していくとした
ら、どうなるか分かるかい?今ウ
ィザードたちが使っている魔法と精
霊魔法が融合した新しい魔法の体
系が創造される事になるんじゃな
いかい?

・・・これはこれは、わしが妙な
話を随分長ったらしくしてしまっ
たようだな。
悪いのう。年をとって、仕事も忙
しいとなると、時々訪ねてくるあ
んたのような冒険者が嬉しくてな