マスター ベネデス:

テオン・・・はい、私の知り合いです。私に剣と弓の使い方
を教えてくださった方です。いつも物静かで厳粛な方でした
が、昔愛していた女性を思う可憐な心の持ち主でもありま
した。あの方があんなにも懐かしく思っていた女性が・・・ま
だ生きていたなんて・・・アラクネたちが作り出す運命の糸と
いうのは、時にして残酷なものですね。さほど大きくない海
峡を挟み、恋人同士がこんなに長い間お互いの行方を知
らずにいたなんて・・・。

残念なことにテオン様は何年か前、エヴァの懐に戻られまし
た。私がこの手でエルフの森まであの方の亡骸を運び、世
界樹の下に埋めました。ああ、リリス様がもっと早く、この手
紙をお書きになっていたら・・・。

この小さいヒューマンの村にお住まいになりながら、テオン様
はその寂しさを紛らわすために、千年前の恋人を懐かしく
思いながら、数多くの美しい詩と歌を作られました。私はあ
の方にその詩と歌を日記に書き留めておくようお勧めしてい
ました。あの方は亡くなる前に、私にその日記をお預けにな
ったのです。お願します・・・この日記をリリス様に届けてい
ただけますでしょうか。

頼みを聞いてやると言う

頼みを断る